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東京地方裁判所 平成8年(特わ)3455号 判決 1996年12月19日

本店所在地

東京都豊島区高田三丁目一六番四号

有限会社現代受験計画

(右代表者代表取締役 小林公夫)

本籍

東京都江東区大島八丁目三〇番

住居

同都杉並区高円寺五丁目二七番二〇号 コート5二〇二号室

会社役員

小林公夫

昭和三一年三月一五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖原史康、弁護人武田喜治各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社現代受験計画を罰金一四〇〇万円に、被告人小林公夫を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人小林公夫に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社現代受験計画(以下「被告会社」という)は、東京都文京区千石四丁目三三番五号シエロワ呉竹二〇四号(平成八年四月一日以降は同都豊島区高田三丁目一六番四号)に本店を置き、学習塾の経営等を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人小林公夫(以下「被告人」という)は、被告会社の取締役(同年四月一日以降は代表取締役))として、被告会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  平成四年四月一日から同五年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五一一一万八二六四円(別紙1(1)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年五月二七日、同都文京区春日一丁目四番五号所在の所轄小石川税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が一五万五四五〇円で納付すべき法人税はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第一九七二号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一八四〇万九二〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  同五年四月一日から同六年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六四九九万四〇〇五円(別紙1(2)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年五月二七日、前記小石川税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が三四万五七五二円で納付すべき法人税はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二三六一万二七〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  同六年四月一日から同七年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四三九六万五二三一円(別紙1(3)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年五月二三日、前記小石川税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が二五万八三三九円で納付すべき法人税はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一五七二万六八〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通

一  豊田栄子及び大熊明俊の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、給料手当調査書、家賃調査書、広告宣伝費調査書、通信費調査費、厚生費調査書、受取利息調査書、損金の額に算入した地方税利子割調査書、事業税認定損調査書及び申告欠損金額調査書

一  検察事務官作成の平成八年九月一〇日付け、同月二五日付け(但し、損金の額に算入した地方税利子割についてのもの)及び同年一〇月二九日付け各捜査報告書

一  登記官作成の履歴事項全部証明書及び閉鎖登記簿謄本

判示第一及び第二の各事実について

一  大蔵事務官作成の事務用品費調査書

判示第一及び第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の消耗品費調査書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の保険料調査書及び雑費調査書

一  押収してある法人税確定申告一袋(平成八年押第一九七二号の1)

判示第二及び第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の会議費調査書

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の水道光熱費調査書及び雑収入調査書

一  検察事務官作成の平成八年九月二五日付け捜査報告書(但し、広告宣伝費についてのもの及び通信費についてのもの)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の振込手数料調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項

2  被告人

判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、いずれも懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下、同様)四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、学習塾の経営等を目的とする被告会社が、三事業年度にわたり合計五七七〇万円余の法人税を免れた事案である。右のとおりほ脱税額は高額である上、被告会社は右各事業年度において欠損申告をしているため、ほ脱率は一〇〇パーセントであり誠に悪質である。被告人は、経費総額を上回らないように、実際の売上高より著しく少額の売上高を計上するなどして欠損申告しており、脱税の犯意は極めて強固である。また、脱税の動機をみても、被告人は、将来受講生が減少するなどして被告会社の経営がうまく行かなくなった場合に備えて、可能な限り蓄財しておきたかったなどと述べているが、たとえそのような不安感を抱いていたにせよ、違法な蓄財が許容されるはずもなく、格別斟酌するに値しないものであって、これらの諸点からすると被告人及び被告会社の刑事責任は重いというべきである。しかしながら、他方、被告会社はその後修正申告の上本件に関する本税、延滞税等を完納していること、被告人が本件各犯行を深く反省し、被告会社の経理体制も改善していること、被告人には前科が全くないことなど、被告人及び被告会社のために酌むべき諸事情も認められる。そこで、当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金二〇〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 平木正洋)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙2

ほ脱税額計算書

有限会社現代受験計画

自 平成4年4月1日

至 平成5年3月31日

<省略>

自 平成5年4月1日

至 平成6年3月31日

<省略>

自 平成6年4月1日

至 平成7年3月31日

<省略>

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